｜ 温泉の効果 温泉の効果には、①物理効果（ⅰ温熱効果、ⅱ水圧効果、ⅲ浮力効果）、②薬理効果、③転地効果があるとされる。 転地効果 ③転地効果について、日常生活を離れて日頃の環境と異なる環境豊かな温泉に行くことによって、日々のストレスを忘れ、自律神経のバランスを正常化する効果がある*1。これは分かりやすいし、実感しやすいものであろう。
*1「転地効果」について、阿岸祐幸『温泉主義No.3』「現代的湯治のすすめ②」（くまざさ出版社、2002）物理効果 ①物理効果のうちⅰ温熱効果は温かい温泉に入浴することで血行が良くなるという効果である。高温泉は交感神経を刺激し、ぬるめの温泉は副交感神経が優位に立つとされる。ⅱ水圧効果は水圧によって全身に圧力がかかり内臓が刺激されるという効果である。ⅲ浮力効果は浮力によって体が軽くなるという効果であり、運動機能の低下した人のリハビリなどに資する効果である。 薬理効果 ②薬理効果は、温泉の成分を皮膚から吸収することにより得られる効果のことである。
療養泉の泉質別に禁忌症と適応症が浴用・飲用それぞれについて定められている。*2これは、上記の物理効果（特にそのうちの温熱効果）と薬理効果を合わせ考慮して定められたものである。
貝原益軒は１７１３年に「益軒養生訓」を出し、入浴などの適応症について触れている。このように江戸時代から温泉療養の有効性については研究されていたが、西洋医学中心の現在の日本において、温泉の薬理効果について、十分な研究と評価がなされているとは言い難い。
しかしながら、一般に慢性疾患の補助的治療として温泉治療の有効性が認められており、また一部の医師も温泉による医療に取り組んでいる*3。
アトピーに効く温泉（長野県内だと角間温泉や釜沼温泉などが有名）や、硫黄泉が生活習慣病に効く、硫酸塩泉が脳卒中に効くなど、様々な効能がうたわれており、これは実際の多数の経験則からも裏付けられているところである。昨秋に秋田県の玉川温泉を訪れたが、この温泉は「癌が治る」との評判で、医者から見放された患者が全国から集まるとされ、独特の「本気」の雰囲気があった。
私の経験でも、酸性泉の入浴が殺菌効果があり皮膚病に効く、塩化物泉が塩分の作用によるものか温まりやすく湯冷めしにくい、炭酸水素塩泉が清涼感を持っていて長時間の入浴が可能であることなどは実感するところである。
今後の医学の分野での更なる研究発展が待たれるところである。
*2昭和５７年５月２５日付け「温泉法第１４条の運用について」と題する環境庁自然保護局長通知。「温泉必携」（改訂第９版）１０５頁以下。
http://www.pref.aichi.jp/eiseiken/4f/kinteki.html
具体的な泉質別禁忌症・適応症が記載されている。
*3、温泉療養について、「温泉療養の手帖」（(社)民間活力開発機構、2005）が詳しく、参考になる。また、医師である渡邊和彦の執筆にかかる「信州の温泉利用法」（郷土出版社、1997）４２頁以下に、疾患別の温泉療法が記載されている。
