以前より憧れていた国見温泉。盛岡から車で１時間ほどのところにある。
全国の温泉ファンに愛される温泉であるが、その理由はひとえにこの緑色のお湯にある。
いろいろな形容の仕方があるだろうが、あえて分かりやすく言うと、バスクリンを入れたような色。元も子もないような言い方であるが、この言い方が一番しっくりくると思う。
やはり実際に目にすると感動する。この色は私が今まで入った中では志賀高原の熊の湯温泉によく似ていると言えるだろう。しかし、ここの源泉は熊の湯温泉とは違い一癖ある。
それがアブラ臭である。浴室を立ちこめるむっとしたアブラ臭は、緑色のお湯に体を沈めるとさらに臭う。アブラ臭マニアにはたまらないだろう。私もこの独特の臭い（これは匂いではなく、臭いと表現すべきであろう）は嫌いではないが、苦手な人は少なからずいると思う。
アブラ分が表面に膜を作り、それが湯の花のように表面に浮いている。きわめて独特である。宿内の掲示によると、長い時間放っておくと牛乳を温めたときのような膜ができるとのこと。実際に朝見てみると、右下の写真のように膜ができていた。
このアブラ分は、味にも影響を与えている。飲泉できるようにコップがおかれているが、飲んでみると、非常にまずい。えぐみを感じ、灯油を薄めて飲んだらこういう味だろうかと思わせる（いや灯油を飲んだことないのでわからないが）味である。ここまで不味い温泉というのもあまり記憶にない。酸っぱさがあればそれなりに飲めるのかもしれないが、何とも妙な味でえぐい。
これまでは「緑の美しいお湯」というだけで勝手に想像していたが、やはり百聞は一見にしかず。すばらしい独特のお湯であった。
内湯が２カ所と露天風呂が１つある。露天風呂は混浴のもの、もう少しいいロケーションでも作れそうなものだが、自炊棟と宿に挟まれていて、あまり眺望は利かない。それはお湯と真剣に向き合っているためだろう。
ここは宿の人にいわれて初めて気づいたが、携帯電話の電波が届かない。
プチ湯治。あるいはプチ逃避。
携帯電話の届く範囲から逃れると不安にもなるが、自分が常に電波に覆われて生活していると思い至り、実に馬鹿馬鹿しい！たまにこういう日があってもいいじゃないか。
アブラ臭がプンプンする緑色のお湯に浸かって、人生を考える。
自炊棟に泊まる。１泊２８００円。
ここは絶対にまた来たい。何かから逃げたいときに。
（H22/10) |
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国見温泉 石塚旅館 
